●口直しは紅茶と君のキス





「よく来たな、。とりあえず中入れよ」

「うん。おじゃましまーす」



 久しぶりに遊びに来たアーサーの家。彼が淹れてくれた極上の紅茶を飲みながら久々に受話器越しではない彼との会話を楽しんだ。一息ついて長旅の疲れもだいぶ癒えてきたころ、唐突にアーサーが切り出した。



「飯食ってくだろ?俺が「全力で拒否します。」

「まだ全部言い終わってねぇよ!なんでだよ!!」

「そこまで聞けばわかるわ!疲れてる所にアーサーの料理兵器食べさせられたら私死んじゃう!」

 NOと言えないのが日本人という定説があるが、今の私は違う…!とは心の中に誓う。

「料理食ったくらいで死ぬかばかぁ!…まさかとは思うが、同じ理由でスコーンに手をつけてない訳じゃないよなぁ?」

 ……誓ったばかりではあるが、元ヤンモードのドスのきいた声で睨まれるとちょっと怖い。思わず乾いた笑いが上がる。

「……えへへへv」

「可愛い顔したって許してやらねぇぞ?どうなんだよ?」

「い、いやだなぁ、たまたまだよ。喉乾いてたから紅茶ばっかり飲んじゃって」

「…まぁ、そういう理由なら…許してやらないでもない、ぞ」



 どうやら信じてもらえたらしい。はほっと胸をなでおろす。

 実はアーサーの料理を食べるのはそれほど嫌いではない。味と触感以外は。

 正確に言えば、食べている間のアーサーの顔とか、「おいしい」と言った後の嬉しそうな顔を見るのは好きなのだ。ただ、体力を大量に消費するのでそれに見合うだけの満足感が欲しい。そこでは考えた。



「これからスコーン食べるからさ、ひとつお願い聞いてくれる?」

「物にもよるが…言ってみろよ」



「食べ終わったら口直しにキスして」



「ぶっ!?げほ、ごほ!な…んだ、それ!」

 飲んでいた紅茶で盛大にむせたアーサーが涙目のまま顔を上げる。我ながら子供っぽいことを言っている自覚はあるが、背に腹は代えられない。

「ご褒美に欲しいなって」

「だから、なんでスコーン食べるのにご褒美がいるんだよ……」

「……駄目?」

「う………」

 キスしたいというからのおねだりは、まんざらでもないらしいアーサーは、口直しという言葉に引っかかりを覚えながらも、首を縦に振った。





―FIN―



*あとがき*

テトの「お茶目機能」@イギリスパロを見て思いついた即興夢(笑)

イギリスに「君にteke kiss me」なんて言われたら、もう夢妄想するしかないですよね!!
(2010/06/17)