龍のすむ家パロ***クルスニク家のお正月





イギリス、スクラブレイ町ウェイワード・クレッセント42番地。
そこに下宿人募集中という張り紙が貼られた一軒の家がある。部屋の中には、朝食の支度をする軽快な音と鼻孔をくすぐるいい匂いがした。

「ルドガー、おはよー!」
「おはよう、エル」

 身支度を済ませたエルがとたとたとキッチンに入ってきた。エプロンをつけて朝食の準備をしていたルドガーが作業を中断して振り返ると、テーブルに置かれた初めて見る料理を眺めてエルは不思議そうに首をかしげている。
 たまにが作ってくれる”味噌汁”用の器に花の形に切られたニンジンなどの野菜に混じって白い塊がスープに浮いていた。

「これ、なんて料理?」
「お雑煮、だよ」
「オゾウニ?」
「そう。日本で新年に食べる料理なんだ。詳しくはに聞いてみるといいよ」
「うん!そうするー」

 この家に住むただ一人の日本人である少女の名前を告げる。親元を離れ留学生として暮らす彼女に、少しでも故郷を感じてもらえたら、とルドガーなりの心配りだった。

「さぁ、もうすぐ食べられるから龍たちを連れてきて」
「はーい!」

 元気よく返事をしたエルが、寝室に戻っていく。入れ違いに蒼い龍の置物を抱えたとリオンが部屋に入ってきた。
「あけましておめでとうございます」と丁寧にあいさつをしたの顔がテーブルの料理を見てぱっと明るくなった。

「えっこれお雑煮!?ルドガーさんが作ったの!?」
「よく作れたな」
「だってルドガーだもん!」

 足元で食事の催促をしているルルを抱き上げて、リオンが感心したように言う。部屋から3体の龍を抱えて戻ってきたエルが会話に加わった。

「うん、前に兄さんと旅行に行ったときにおいしかったからレシピを調べてたんだ。口に合うといいんだけど」
「ルドガーさんの料理なら大丈夫だよ!!あ、これ並べればいい?」
、先にルルのエサを出せ。このままだとテーブルの上の物も食べかねないぞ」
「わかったールル、もうちょっと待ってね」
「ナァ〜」
「ありがとう、二人とも。あ、おはようジュディス」 

 ルドガーの料理は美味しい、というのはこの家に住む人間の総意だ。昔、飲食店でバイトをしていたらしいが店を構えてもやっていけるとは思っていた。
 が猫缶の蓋を開けた時に、顔を上げたルドガーが最後の住人の名前を呼んだ。

「おはよう。もう皆揃っていたのね」
「ジュディス!今日の朝食はオゾウニだよ!」
「知っているわ。リクエストしたのは私だもの」
「そうなの?」

 得意げに朝食のメニューを伝えたエルだったが、ジュディスの返答が思ったものと違って少し頬を膨らませた。ジュディスは部屋から持ってきた鯨のような形の龍をテーブルに置き、定位置の席に座った。

「作れるかはシェフ頼りだったけれど」
「いやあ、背中を押してもらえて助かったよ」

 エプロンを外しながら、ルドガーが照れくさそうに笑う。気を効かせてくれたルドガーとジュディスに感謝しながら、も席に着く。

「それじゃ、冷めないうちに頂きましょうか」
「うん!いっただっきまーす!」

5人と一匹で楽しく食卓を囲む。テーブルに並べられた龍たちの瞳が朝日に照らされてキラキラと光っていた。







*あとがき*

あけましておめでとうございます!他の執筆やろうと思ってたんですけど、これが頭から離れなくて結局書いた(笑)

リオンと夢主いちゃいちゃというより、ルドエルのほのぼのがメインという……いやうんそれも書きたかったんだけどね

メンバーはあともう一人本家主人公役にジュード君かなとか考えてるので余力?があればまた書くかも。

今年もよろしくお願いします!

(2014/01/02)