風に揺れる葉の音を聞きながら、は眠りを誘う暖かな日だまりに包まれていた。
ぼんやりと雲の流れる空を眺めていたの頭上に、影が現れた。
を見下ろしていたのは、彼女のよく知る人物。
「あれ、リオンだー何してるの?」
「…お前こそ何をしている」
草原に寝転がったにリオンは半ば呆れながらそう返した。
「私?ひなたぼっこ。リオンもする?」
「誰がするか」
は笑顔で質問に答えるとそのまま勧めてきたが、リオンの表情はかわらない。
「たまにはいいんじゃないの?折角の休憩時間なんだし」
は草むらから起き上がり、難しい顔をしているリオンを見上げる。
「………」
対してリオンの視線は、先程から感じる振動の先――彼のマントの裾へと向けられた。
そこにはマントをひっばりながら地面をぽんぽんと叩くの姿。これは最早勧めではなく強制じゃないのかとリオンは内心つっこむ。
しかし、口に出したところで彼女は諦めるような性格ではないし、実力行使に出かねない。
…それに、惚れた弱みがある以上彼にはどうすることも出来なかった。

「えへ、ありがと。」
は満足げに微笑んで大人しく隣に座ったリオンの頭を撫でる。
他の人間なら間違いなくその手を振り払っているのだが、彼女に対してだけはできなかった。何故なら、彼女のそれは子供を褒めるものとは違うものがあるから。そして何より、恥ずかしい思いよりも嬉しさが勝ってしまうのだ。
「…も、もういいだろうっ」
「え〜つまんない」
いつまで経ってもやめる気配のない彼女の手から、音を上げたリオンは逃げ出した。
反対につまらなそうには口を尖らせる。
「"えー"じゃない…」
「だってこんなチャンスめったにないし。」
リオンがこうしてくれるのは、二人きりの時だけだ。大人数で旅をしている今は、二人だけの時間を作るのは、なかなか難しいものがある。

「流石に今のままじゃ寂しいし…さ」
は視線を空へ戻して独り言のように言う。
彼女のその横顔にリオンの心はざわついた。
「………」

「だから…」
「…な、なんだ」
ちらり、と横目で訴えられて、たじろぐリオン。

「…えいっ」
「っ!?」
は勢いよくリオンに飛びついた。突然のことで受け止めきれなかったリオンはそのまま草の上へ倒れる。
楽しそうな笑みを浮かべるに、リオンはため息をついた。
「〜〜最初からこれが目的か…」
今までの動作がすべてこの為に行われていたことに呆れると同時に感心してしまうリオンだった。
「当然♪ということで、今くらい私に付き合ってねv…何、リオン?」
やっとリオンを当初の目的の状態にすることに成功したは、得意顔で彼の上から隣へ移動しようとしたのだが、リオンに腕を掴まれてしまった。
「……いいだろう。――但し」
「きゃ!?」
リオンはの腕を掴んでいた手を自分の方へ引き寄せる。
「僕も好きにさせてもらう」
を腕の中に納めてリオンは仕返しだとにやりと笑った。
「で、でもこれじゃ私が落ち着かない…!」
「付き合えと言ったのは誰だ?僕はやめても構わないが?」
「ず、ずるいーっ!!」
腕の中で顔を赤く染めてじたばたもがくを優しく抱きしめ、リオンは空を見上げた。


見上げた空は蒼くどこまでも広がっていた。



*あとがき*
遅くなりましたが、短編1個目ですー!(汗
可愛いリオンを目指したらこんなんになってしまいました…^^
(07/06/17)